生命のあり方を問う感動小説「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」の感想
2012年に出版され、世界中で大反響を呼んだベストセラー感動小説「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」ジョジョ モイーズ (著)を読みました。
可愛らしいブックカバーのデザインからは想像できないほど、生命のあり方を考えさせられる重厚なストーリーでした。
生命のあり方を問う小説
ラブストーリーや恋愛小説といったジャンルの小説は普段読むことが少ないのですが、周りから勧められて読んでみました。
実際に読んでみて、恋愛小説というようりも、尊厳死やいのちがメインのテーマという印象を受けました。
あらすじとして、介護職についた主人公ルー(女性)が事故で四肢麻痺になってしまった実業家ウィル(男性)と出会い、お互い徐々に気持ちが打ち解け合っていくのですが、ウィルが尊厳死の施設に予約を入れているという事実をルーは知ってしまいます。ウィルに生きる希望も持ってもらうために、ルーは様々なことに奮闘します。
結末はぜひ実際に小説を読んでいただきたいのですが、先程も述べたとおり恋愛小説という感じはあまりしませんでした。
ルーとウィルが惹かれ合っていくところはラブストーリーという感じなのですが、ウィル本人の苦しみ、ウィルの家族の苦しみ、尊厳死を望むウィルのことを知ったルーとルーの家族など、様々な角度から尊厳死や生きることについて考えさせられます。
尊厳死について
ウィルの尊厳死について口論するルーとルーの母親とのやりとりが特に印象に残りました。
読んでいるだけで痛いほど伝わってくるウィルの苦しみを考えると、尊厳死という選択も理解できなくはないと感じた時もありますが、「おじいちゃんの命をとれるの?」というルーの母親の言葉に再度尊厳死について考えさせられました。
状況は全く違うかもしれませんが、例えば自分の家族が将来重い病気になってしまい苦しんでいるとき、「もう楽にさせてくれ。」と言われるかもしれません。
不謹慎で想像するのも怖いので、あまり考えたくはないのですが、自分の家族にこのようなことを言われた時に、どのような決断をするべきなのか、いくら考えても答えは出てきませんでした。
自殺とは違う
日本尊厳死協会によると尊厳死とは、「不治で末期に至った患者が、本人の意思に基づいて、死期を単に引き延ばすためだけの延命措置を断わり、自然の経過のまま受け入れる死」「尊厳死は自己決定により受け入れた自然死と同じ意味」という考え方です。
なので自然死ではない自殺とは一緒にするべきではないと思いました。
皮肉が面白い
内容は重かったのですが、読んでいて楽しい場面もあります。
ルーとウィルの皮肉たっぷりの会話は読んでいてとても楽しかったです。
イギリスの作家なので、このあたりはやはりブラックユーモアの国民性かもしれません。