孤独な時間に、人とのつながりを考える小説5選
読んでいて「この人、誰かに話を聞いてもらえたらいいのに」と思った小説を5冊紹介します。
『君が夏を走らせる』のように楽しく読める作品もありますが、ほかの4冊にはかなり重い話も出てきます。疲れているときに読むなら、読む順番は選んだほうがいいかもしれません。
52ヘルツのクジラたち/町田そのこ
家族との関係に傷ついてきた女性と、母親から虐待を受ける少年が出会う話です。52ヘルツのクジラは、声を出していても仲間に聞き取ってもらえないと言われています。
「声を出しているのに届かない」というのが、この小説ではつらいところです。助けてほしいと言えない人もいますし、言ったとしても相手に届くとは限りません。二人が出会うことに救いを感じる一方で、それまで誰にも気づいてもらえなかった時間を思うと、簡単に温かい話とは言えない気がします。
虐待の描写があるので、読むときは少し気力が必要です。
流浪の月/凪良ゆう
世間から見ると、主人公の更紗と文の関係には、わかりやすい説明がついてしまいます。でも読み進めていると、その説明だけで二人のことをわかった気になるのは違うのでは、と思えてきます。
誰かの事情を知らないまま「こういうことだろう」と決めてしまうことは、自分にもありそうです。二人を助けようとする人が、本人たちの気持ちを聞いているとは限らないところが、この小説の難しさだと思いました。読み終わっても、すっきりした答えを出せる話ではありません。
君が夏を走らせる/瀬尾まいこ
高校生の大田君が、先輩の幼い娘の子守をすることになります。慣れない子守に振り回される話なのですが、子供の相手をしているうちに、大田君自身にも少しずつ変化が出てきます。
最初から立派な大人が子供を育てる話ではなく、どうしたらいいのかわからない高校生が、何とか一日を過ごしていくところがいいです。子守の大変さもあるのですが、それだけで終わらず、二人で過ごした夏がちゃんと残る感じがしました。
今回の5冊では、まずこれから読むのがおすすめです。
とわの庭/小川糸
主人公のとわが、母と暮らすところから始まる話です。小川糸さんの小説なので、読む前はもう少し穏やかな話を想像するかもしれません。しかし、とわが置かれる状況はかなり厳しく、読んでいてつらい部分があります。
それでも、つらいことがあった人に向かって「元気を出して」と言うだけでは何も変わらないのだと感じます。人を信じたり、自分の居場所を見つけたりするまでには、時間が必要なのだと思いました。
優しい雰囲気だけを期待すると驚くかもしれませんが、その分、とわのことを最後まで見届けたくなる小説です。
ライオンのおやつ/小川糸
余命を告げられた雫が、島のホスピスで過ごす話です。ホスピスでは、入居者が食べたいおやつをリクエストできる時間があります。
人生の最後に食べたいものは何だろう、と聞かれても、私はすぐには決められません。雫もなかなか選べないのですが、そこがいいなと思いました。大げさな願いではなく、食べたいものや誰かと過ごす時間から、今の自分が大事にしたいことを考えられます。
死がテーマなので悲しい場面もありますが、読み終わったあとには、おやつを食べるような普通の時間をもう少し大切にしたくなる小説です。