「普通に生きる」って何だろうと考えた小説5冊
仕事や結婚、家族のこと。周りから「普通はこうする」と言われても、自分にはしっくりこないことがあります。そんなときに思い出す小説を5冊紹介します。
コンビニ人間/村田沙耶香
コンビニで働く恵子は、店員としてなら何をすればいいかわかります。でも、仕事の外に出ると、周りから結婚や将来のことをいろいろ聞かれます。
本人は今の生活を続けたいのに、周りがそれを「普通ではない」と判断してしまうのが怖いです。読んでいるうちに、恵子よりも、本人の話を聞かずに心配したり助言したりする人たちのほうが気になりました。短い小説ですが、読み終わってからも考えてしまいます。
傲慢と善良/辻村深月
婚約者が突然いなくなり、相手のことを探すうちに、これまで知らなかった姿が見えてきます。恋愛の話なのですが、家族や周りの期待にどう応えてきたかという話でもあります。
自分は相手のことを理解しているつもりでも、都合のいいところだけ見ていたのかもしれません。タイトルの「傲慢」と「善良」が、読んでいるうちに自分にも向いてくるようで、少し居心地が悪いです。だからこそ面白い小説でした。
星の子/今村夏子
主人公のちひろは、両親が信じているものと、家の外の世界との間で成長していきます。家族を大切に思う気持ちと、親の考えをそのまま受け入れられるかどうかは別の話なのだと感じました。
外から見ると「変わった家族」と言ってしまいそうですが、ちひろにとってはその家が毎日の生活です。親を簡単に悪者にすることも、ちひろの不安を見なかったことにすることもできません。静かな小説ですが、気になる場面が残ります。
夏物語/川上未映子
女性の体や、子供を持つことについて描かれる長編小説です。「子供が欲しい」と言うのは簡単でも、実際には体のこと、家族のこと、周りの意見など、いろいろな問題があります。
主人公が考え続ける姿を読んでいると、誰かの選択に外から簡単な答えを出せないと思いました。かなり厚い本ですが、会話を読みながら、登場人物と一緒に考えているような気持ちになります。
対岸の彼女/角田光代
立場の違う二人の女性の関係を描いた小説です。家庭を持つ人と仕事をする人、というふうに分けてしまうと簡単ですが、それぞれに寂しさや難しさがあります。
大人になってから友達を作るのは、学生の頃より難しいのかもしれません。相手の生活が自分と違うと、仲良くなりたい気持ちがあっても少し身構えてしまいます。二人の距離を見ていると、自分も勝手に線を引いていないか考えさせられました。